肩凝り・頭痛は眼精疲労かも…老視対策は40代半ばで始めるべき
スマートフォン(以下、スマホ)やパソコンの長時間操作は疲れ目(ひどくなると眼精疲労)の原因になるが、加齢によって進む「老視」の原因のひとつにもなる。
人が物を見るとき、目はカメラのレンズの役割をする水晶体の厚さを調節し、ピントを合わせている。その水晶体の厚さを調節しているのが、水晶体の周りに付いている「毛様体」という筋肉だ。遠くを見るときは、毛様体筋が緩んで水晶体が引っ張られて薄くなる。逆に近くを見るときは、毛様体筋が収縮(緊張)して水晶体を膨らませてピントを合わせている。
しかし、年を取ると水晶体の弾力性が次第に失われていく。すると、水晶体の厚みを増すことができなくなるため近くの物がぼやけて見えにくくなる。これが老視だ。「梶田眼科」(東京都港区)の梶田雅義院長が言う。
「老視の初めは毛様体が目いっぱい頑張って働くので、どうにか見えています。だから自分が老視だと気づきにくい。そのため、疲れ目の状態を放置してしまい、眼精疲労に悪化させてしまうのです。しかし、眼精疲労に伴う肩凝り、頭痛、自律神経失調症などは体の症状なので、本人は目が原因だと思わないのです。40代半ばになったら老視対策(眼鏡の使用)を考えた方がいいでしょう」
疲れ目の元凶は、近くを見ている目のピントの位置を長時間動かさないでいること。水晶体の厚さを調節している毛様体筋や、視線を上下左右に動かすための「外眼筋」とういう筋肉(6本)などが凝り固まってしまうからだ。スマホやパソコンの操作、長時間手元を凝視するデスクワークのとき、10分に1度は3メートルくらい先を見るのがいいのは、毛様体筋や外眼筋の凝りをほぐし、血流を良くしてリフレッシュさせるためだ。
眼鏡レンズを選ぶなら…
目が疲れてきたときには目薬を差すのも有効。しかし、市販の目薬には、さまざまな有効成分が配合されていて、種類が多いので、店頭の薬剤師に相談するのがいい。ピント調節機能を改善させるなら「ネオスチグミンメチル硫酸塩」が配合されているもの、外眼筋の疲れを緩和させるなら「ビタミンB12」などが配合されている赤色の目薬がお薦めという。
ただし、目薬を差す回数は1日3~4回、多くても6回未満。あまり多すぎると含まれる防腐剤などの副作用で、角膜に傷がついたり、炎症を起こす場合があるので注意しよう。
目の乾きが慢性化するドライアイになっても目が疲れるが、梶田院長は逆に「疲れ目がドライアイを引き起こしている」と指摘する。
「ドライアイで最も多い涙の質に異常があるタイプには、自律神経が関係しています。目は近くにピントを合わせるときは副交感神経が優位になり、遠くを見るときは交感神経が優位に働きます。それで副交感神経優位の疲れが続くと、涙が蒸発しやすいサラサラ涙に変わるのです。遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズで目を疲れないようにして、副交感神経をあまり刺激しないようにすると正常の涙に戻ります」
重いドライアイでは、涙の出口を“涙点プラグ”という栓で塞ぐ治療法がある。その場合でも、適正な眼鏡やコンタクトレンズを処方することで涙点プラグが必要でなくなる患者が、これまでも何人もいるという。
眼鏡は、今は一つで「遠中近」のすべてをカバーできるのが一般的。レンズは、度数の勾配が滑らかな、ここ2~3年に発売された新しいデザインのレンズを選んだ方がいい。できれば、両目で3万~4万円くらいの費用(フレームは別)はかけてもらいたいという。
「フレーム選びで重要なのは、鼻パッドの部分です。金属の根っこがあり、先にパッドを別途ネジで留める箱状のものが付いてるものがいい。鼻パッドは“眼鏡の命”で、目とレンズの距離は12ミリと決まっています。ここがしっかり固定されていないと、矯正が狂って逆に目が疲れます」
コンタクトレンズの場合は、度数よりもレンズのカーブが目の形に合っているかどうか。日本人は西洋人に比べて黒目のカーブが緩やかで、そこにカーブのきついレンズを入れると、眼球に吸い付いて角膜を傷つけるなどのトラブルの原因になる。
レンズは、涙で黒目の上に浮いているのが適正な状態。まばたきをするたびにレンズが少し動いて、涙が入れ替わって安全に機能するという。眼鏡やコンタクトレンズは、必ず眼科で処方してもらうことが、目や体を健康に保つ鉄則だ。
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