自覚しにくい目の病気を早期発見するには?

※この記事は『THE21』2019年12月号より引用いたしております。

会社の健康診断だけでは、目の病気は見つかりにくい

超高齢社会の現代では、白内障や緑内障など加齢に伴う目の病気にかかる人が増えている。一般的に自覚症状があまりないので、気づくのが遅れて手遅れになるケースも。創立138年の歴史がある眼科の院長・井上賢治氏に、目のトラブルの予防法、病気の早期発見のためできることについてうかがった。

40代になったら老眼と緑内障に注意

40代になると、老眼の症状が現れ始めます。これは目が対象物にピントを合わせるための調節機能が衰え、近くのものが見えにくくなる症状です。老眼は病気ではなく、加齢によって誰にでも起こる老化現象なので、予防するというよりは、「老眼になった」と早く自覚し適切に対処することが大事です。老眼鏡や遠近両用コンタクトレンズなどを使用して、目の負担を軽くすることを心がけてください。
多少手元が見えにくくなっても、「まだ老眼になる歳ではないだろう」などと考えて放置しがちですが、そのままではパソコン作業などの効率は下がりますし、眼精疲労を起こして頭痛や肩こりなどにつながることもあるので要注意です。
また、緑内障のリスクも高まります。疫学調査によると、40歳以上の5%、20人に一人が緑内障というデータもあるほどです。
緑内障は視神経に障害が起こり、視野が狭くなる病気で、放っておくと失明につながる危険があります。ところが初期段階は自覚症状がほとんどないため、自分では気づきにくいのが特徴。かなり症状が進行すれば、自分の視野が欠けていることに気づきますが、一度損なわれた視神経を回復させることはできませんし、処置が遅れれば最悪の場合は失明に至ります。
しかし早い段階で治療を始めれば、進行を遅らせることができます。よって緑内障は、欠けた視野の範囲が広がらないうちに、できるだけ早期発見することが何より重要です。

自覚症状のない病気も。眼科ドックの勧め

初期の緑内障は自覚症状がないので、発見するには定期的な検診が唯一の手段となります。会社の健康診断では視力検査しか受けないことが多いのですが、緑内障は眼圧検査や眼底検査なども受けなければ発見できません。
眼圧は眼球内の圧力のことで、眼圧が上がると視神経が圧迫され、見える範囲が狭くなる原因となります。ただし近年は、眼圧に異常がなくても緑内障の症状が起こる「正常眼圧緑内障」が増加しているので、眼圧検査だけでは不十分。目の奥の中心部分を撮影する眼底検査も合わせて行い、総合的に判断する必要があります。眼底検査をすれば、緑内障だけでなく、糖尿病や高血圧による目の出血や網膜の異常によりものが見えにくくなる加齢黄斑変性などの疑いも調べることができます。
よって40代になったら、ぜひ年に一度はこれらの検査を受けることをお勧めします。とくに血縁関係に緑内障の方がいる人や糖尿病や高血圧の人、強い近視の人は、緑内障のリスクがより高まるので、定期的に検診を受けてください。さらに詳しい検査が受けられる「眼科ドック」を3年から5年に1回受けると、より安心です。例えば当院では、眼圧検査や眼底検査に加え、赤外線で目の中の断層を撮影する三次元眼底解析検査や、角膜の細胞を調べる角膜内皮細胞検査など、15項目の検査を実施しています。
日常的に下記のセルフチェックを行うことも、目の病気の早期発見につながります。ポイントは、左右片目ずつチェックすること。両目でものを見ると、片方の目に異常があっても、もう片方の目が視力や視野をカバーするので、目の病気に気づきません。
【左右それぞれ片目ずつチェック!】
朝起きたら、同じ場所から同じもの(カレンダーなど格子状のものが最適)を片目ずつ見る。視力が落ちていないか、線がゆがんで見えないか、見えない部分がないか感度をチェックする。
・見え方に左右で差はないか?
・視力が落ちていないか?
・線がゆがんで見えないか?
・欠けて見えない部分がないか?

パソコンを50分使ったら10分目を休めよう

深刻な病気ではなくても、目の健康を損なうトラブルはたくさんあります。代表的なのがドライアイで、昔に比べて非常に増えています。エアコンの普及により、空気が乾燥する場所で過ごすことが多くなったことや、パソコンやスマホの画面を長時間見続ける人が増えて、まばたきの回数が減っていることなどが主な原因です。
「目の乾きくらい大したことはないだろう」と思いがちですが、目を保護する油や水分が不足すると、眼球の表面に細かい傷がつきやすくなり、雑菌が入って角膜炎などを引き起こす原因になります。また、ドライアイによる目の違和感は自分が思っている以上にストレスになるので、パソコンに向かっていても仕事に集中できないといった悪影響を及ぼします。
ドライアイや眼精疲労などのトラブルを防ぐには、「パソコンを50分使ったら、10分休憩する」というように、目を休める時間を作ることが大切です。そして休憩中は、窓の外の景色など遠くを見ましょう。人間は近くを見るときに最も目の筋肉を使うので、遠くを見ることで目がリラックスできます。くれぐれも休憩中にスマホをいじったりしないこと。パソコンから目を離しても、結局手元を見続けていたら意味がありません。

目薬のさしすぎは逆に目の潤いを奪う!?

目の疲れを取るには、市販のホットアイマスクやホットタオルなどで目を温めるのも効果的。目の周りの血流が良くなり、筋肉の緊張がほぐれます。
疲れ目やドライアイ対策として目薬を使うときは、正しい用法・容量を守りましょう。たくさん点眼すれば目が潤うと思っている人も多いのですが、あまりに頻繁に目薬をさすと涙液が洗い流されてしまい、涙液に含まれるムチンなどの保護成分も失われてしまいます。
市販の目薬を買うときは、できるだけ防腐剤が入っていないものを選んでください。防腐剤入りの目薬を頻繁にさすと、目にアレルギー症状を引き起こすことがあります。またメントール入りの目薬は、さすとスッキリして爽快感が得られますが、それによって疲れ目やドライアイが改善するわけではありません。それぞれの製品には効能・効果が記載されているので、使用感だけではなく、「どんな症状に効くのか」をきちんと確認して選んでください。
日常生活では、目を紫外線から守ることも大事です。紫外線を大量に浴びると、目の細胞の老化が進み、白内障や加齢黄斑変性の原因になります。また目の病気は加齢が原因の一つになることが多いので、食生活でもビタミンA・Eなど抗酸化作用の高い栄養素を積極的に摂ると良いでしょう。

この記事は『THE21』2019年12月号より引用いたしております。